2024年12月29日、韓国の務安(ムアン)国際空港で発生した航空機事故は、滑走路の設計と外壁の存在などが悲劇を拡大させたとして大きな注目を集めています。
乗客179名が命を落とすというこの大惨事は、空港設計に潜む課題を浮き彫りにしました。
本記事では、務安(ムアン)国際空港が抱える4つの問題点について調査してみました。
務安国際空港で起きた悲劇の概要
2024年12月29日、タイ・バンコク発済州(チェジユ)航空機が着陸に失敗し、滑走路を離脱。
コンクリート製の外壁に激突し、181人のうち179人が死亡しました。
滑走路からわずか323メートルの距離に設置された「外壁」が致命的な結果を招いたとされています。
それでは、今回の事故が起きてしまった原因を、務安(ムアン)国際空港の抱える問題点を4つ挙げてみたいと思います。
①滑走路の先になぜ堤防があったのか
②滑走路がなぜ短いのか
③空港一帯はもともと鳥の飛来地であったのに、なぜバードストライク対策を行っていなかったのか
④国際線就航には施設面で十分ではなかったのではないか
1つずつ具体的に見ていきたいと思います。
「デスウォール」と呼ばれた外壁はなぜあった?
問題点①滑走路の先になぜ堤防があったのか
外壁の前にはコンクリートの堤防がありました。
胴体着陸を試みたもののスピードは落ちず、そのまま外壁に衝突・炎上。
旅客機は全壊しましたが、堤防は大きく崩れませんでした。
ムアン空港の飛行機事故
— イワヲ☆城と古墳と古代官道 (@siro46kofun) December 29, 2024
滑走路の末端に大きな土塁が築かれていた!これに激突
こんな飛行場ありえんよね?
2枚目撮影位置特定
3枚目滑走路端の土塁
土塁がなければ機体の破壊は無く被害も少なかったはず…#チェジュ航空機事故#ムアン飛行場 pic.twitter.com/HZBC3TCyu7
もし、
- コンクリート堤防がなかったら?
- 壊れやすい構造物であったなら?
このような大惨事には至らなかったという指摘が上がっています。
問題の外壁は、滑走路に設置されたローカライザーアンテナを保護するためのものでした。
ローカライザーアンテナ(着陸誘導施設)とは何?
航空機が滑走路に着陸する際、安全を確保するために使われる装置とのこと。
空港ごとにさまざまな形式で設置されています。コンクリート構造物もあれば、積み上げた形もありますが、多くの方位角施設は折りたためる形になっているそうです。
しかし、本来このような構造物は壊れやすい素材で作られるべきとされています。
航空専門家は「こんなに堅牢な構造物は世界的にも珍しい」と指摘しています。
「この種の構造物はあんな場所にあってはならない」「滑走路から200メートル離れた場所に強固な構造物が存在するなど、これまで見たことがない」と指摘した。
Chosun Online
「航空機が壁と激突していなければ、柵を突き破って道路を通り過ぎ、隣接する空き地で停まっていたはずだ」とした上で「航空機がスピードを落として停止するのに必要な空間は十分にあった。柵を突き破る際に多少の被害は出ただろうが、それでも乗客は助かったと思う」との見方を示した。
Chosun Online
世界中どこでも見たことがない…滑走路の端にコンクリートの外壁
— keitadj (@keitadj3) December 30, 2024
英国空軍の航空専門家デビッド氏「ムアン空港に土手を設置したのは犯罪行為に近い。パイロットは最善の着陸をした。着陸滑走の最後には機体に大きな損傷はなかったが、機体が外壁に衝突して火災が発生し、乗客が死亡した」 pic.twitter.com/B9ZJioY9mx
万が一を言っても起きてしまったことは変えられませんが、同じ事故を防ぐためには問題点に向き合う必要はありますね!
滑走路の短さが招いた影響とは?
問題点②滑走路がなぜ短いのか
務安(ムアン)空港の滑走路は、工事中のために通常よりも短縮され、実際に利用可能な長さは2500メートルしかありませんでした。
仁川(インチョン)国際空港:3750〜4000m
ソウル・金浦(キムポ)空港:3200~3600m
釜山(プサン)金海(キメ)空港:3200m
韓国国内の他の空港の滑走路の長さと比べても、務安(ムアン)空港の滑走路は短いことが分かりますね。
この短さが着陸ミスを誘発し、滑走路外への突進を招いたと考えられています。
バードストライク対策
問題点③なぜバードストライク対策を行っていなかったのか
事故機は着陸前にバードストライクの可能性が報告されていました。
さらに、空港周辺は鳥の飛来地であり、建設当初からリスクが指摘されていました。
・10件のバードストライクが発生(2019年−2024年)
・務安空港の鳥類衝突発生率は0.09%
(参考:済州(チェジュ)空港:0.013%、ソウル金浦空港:0.018%)
・鳥の群れ探知レーダーや、熱画像探知機を設置していない
これらの要因が複雑に絡み合い、大惨事につながったと見られています。
国際線の運航管理経験が短い「初心者」空港だった?
問題点④国際線就航には施設面で十分ではなかったのではないか
一方、国際線の運航管理経験が短い「初心者」空港だったことも、事故が拡大した原因の1つと指摘されています。
務安(ムアン)空港は「韓国西南圏の拠点空港」を掲げ、年間992万人の利用を目標に開港したが、2023年は利用客は24万6000人にでした。
2007年に開港した務安(ムアン)空港。
開港から17年目の2024年12月に、国際線の定期路線が運行されましたが、それから21日で大惨事が発生してしまいました。
・消防出動要請を出すのが遅かったのではないか
・機長が「メーデー」を宣言してから、管制塔が消防に出動要請するまでに3分もかかった
・事故当時、勤務していた管制官はたったの2人であった
再発防止のために必要な改善策
- 空港設計基準の見直し:外壁を含む障害物を柔軟な設計に変更する
- 滑走路延長の早期完了:工事の迅速化で安全な運用を実現
- 鳥害対策の強化:定期的な鳥の監視と空港周辺環境の改善
- 操縦士のトレーニング:緊急時の判断力を高めるための訓練充実
これらの対策が実行されれば、同様の悲劇を未然に防ぐことが出来ると期待されます。
ハード面に関してすぐに対策を講じることは難しいかもしれませんが、命の尊さに勝るものはありません。
今回の悲劇を教訓にしっかり検討してもらいたいものです。
まとめ
務安(ムアン)国際空港の事故は、航空安全における設計の重要性を改めて示しました。
外壁の配置や滑走路の長さ、鳥害対策など多岐にわたる問題が複合的に影響したと見られています。
再発防止のためには、空港関係者と政府が一丸となって安全基準を見直し、実効性のある対策を講じることが必要です。
最近のコメント