三木康一郎監督の問題発言がヤバい…映画監督ってそんなに偉いのか?


2024年7月5日に公開された映画『先生の白い嘘』。、 .0(

主演は奈緒(なお)さんが務めています。

鳥飼茜(とりかいあかね)さんの同名コミックを原作にした作品で、主男女間の性の格差がメインテーマであり、性被害暴力に関する描写もあることからR15に指定されています。

監督を務めた三木康一郎(みきこういちろう)監督は、公開前日の4日に公開されたWEBメディア『ENCOUNT』のインタビューで、奈緒さんからインティマシー・コーディネーターを入れてほしいとお願いされたが、「監督と女優の間に人を入れたくなかった」といった理由から断ったと明かしています。

この三木康一郎監督の発言が、波紋を広げています。

今回は三木康一郎監督の問題発言について、一体、何が問題だったのか、なぜこれほどまでに炎上してしまったのか、わかりやすく解説していきたいと思います。

三木康一郎監督の問題発言が炎上&批判殺到

『先生の白い嘘』では、男女の性の不条理に切り込む内容であり、性的シーンの撮影もあるため、主演の奈緒さんは撮影時にインティマシー・コーディネーターを間に入れてほしいと要望しました。

しかし、三木康一郎監督は「間に人を入れたくなかった」という理由などから拒否していたことをインタビューで語ったことから、監督自身や映画製作陣に批判が殺到してしまいました。

SNS上では批判的な意見が多く上がり、物議を醸しています。

奈緒さん側からは『インティマシー・コーディネーター(性描写などの身体的な接触シーンで演者の心をケアするスタッフ)を入れて欲しい』と言われました。すごく考えた末に、入れない方法論を考えました。間に人を入れたくなかったんです。ただ、理解しあってやりたかったので、奈緒さんには、女性として傷つく部分があったら、すぐに言って欲しいとお願いしましたし、描写にも細かく提案させてもらいました。性描写をえぐいものにしたくなかったし、もう少し深い部分が大事だと思っていました。

ENCOUNT

インティマシー・コーディネーターを入れない分、配慮して撮影を行ったと話しています。

しかし、映画の初日舞台挨拶にて主演の奈緒さんは以下のように話し、「すれ違い」「(配慮や理解が)不十分」であったことを語っています。

色々なやり取りがあり、すれ違いがあったことは事実です。でもそれは当人同士の問題として。権力に屈するようなことは一切なく、対等な関係で監督ともお話をしましたし、言いたいことは伝えました。ただ、伝えた上でも、どうしても現場に対して不十分だと思う部分が正直ありました。

なので、そこは私たちも本当に未熟で、私自身がもっとちゃんとコミュニケーションを取り、この作品を公開するにあたって、どういう風に皆さんを傷つけないように言葉を選んで、ちゃんと自分たちの真意として伝わるかというところまで宣伝の部分でお話できていなかったことが、結果的に皆さんを不安にさせてしまうようなことを招いてしまったのかなと、私自身は自分のこととして深く反省しております。

『先生の白い嘘』初日舞台挨拶にて

インティマシー・コーディネーターの存在意義をめぐって世間からは様々な意見が飛び交い、映画製作陣に対しての議論が巻き起こる顛末になってしまいました。

Tomoちん
Tomoちん

映画公開直前に大きな騒動となってしまいました。

三木康一郎監督の問題発言が炎上した理由は4つ

では、今回の問題発言による炎上はなぜ起きたのでしょうか。

その理由について詳しく見ていきたいと思います。

理由①主演女優の要望を聞き入れなかった

三木康一郎監督は、映画『先生の白い嘘』の主演は10人くらいに断られたと話していました。

4年ほど前には主演選びに難航していると思われる投稿をXにしています。

やっとのことでこの難しい役を引き受けてくれた奈緒さん。

撮影に臨むにあたり、奈緒さん側から、性的描写を撮影する際に監督と俳優の間に入って身体的・精神的サポートをする「インティマシー・コーディネーター」を入れるよう要望があったと言います。

しかし、三木康一郎監督は“却下”。

奈緒さんが快諾してくれたことで作品を完成させることが出来たとも言えるのに…なぜ、奈緒さんの要望を聞き入れられなかったのでしょうか。

映画の撮影は2022年。

2年前といえば、映画監督で俳優の榊英雄(さかきひでお)被告による複数の女性への性暴力が報じられた時期と重なります。

これを機に映像業界では性被害の告発が相次ぎ、制作現場における性暴力やハラスメントを問題視する動きが拡大しました。インティマシー・コーディネーターの存在が着目されはじめたのもこの頃でした。

三木康一郎監督の発言が問題視されたのは、その裏に“日本の映画界が古い体質である”ことや、“監督と俳優の間のパワーバランス”など、時代錯誤な考え方や体質に対して、批判の声が噴出してしまいました。

理由②あらすじの不適切表現が削除された

映画.com

映画『先生の白い嘘』の予告(60秒編)では、性の男女間の格差、性の目覚め、相手への嫌悪、親友への裏切りによる自己嫌悪と、さまざまな感情で揺れ動く主人公を繊細かつ、大胆に演じている奈緒さんの演技が印象的です。

公開直後、公式サイトからあらすじの一部が削除されました。

ORICON NEWS

美鈴(演:奈緒さん)が早藤(演:風間俊介さん)を拒めない理由として「早藤を忌み嫌いながらも、快楽に溺れ、早藤の呼び出しに応じてしまう美鈴」と書かれていた部分が「早藤を忌み嫌いながらも、早藤の呼び出しに応じてしまう美鈴」に変更されました。

「快楽に溺れ」という表現が削除されました。

これについて公式な見解は出ておらず、原作を読んでいたファンを中心に

原作を理解していない表現なのでは

被害に遭ったことを自責し、葛藤する美鈴をめぐる表現としては不適切に思う

などという声が上がりました。

理由③原作者の鳥飼茜氏の意向が反映されていない?

朝日新聞デジタル

初日舞台挨拶の中で、原作者である鳥飼茜(とりかいあかね)さんからの手紙が代読されました。

この手紙には、撮影が終わった1年前に鳥飼茜さんが書いていた内容に加え、現在、改めて思うことが綴られています。

鳥飼茜さんの手紙の概要

センシティブなシーンの撮影による出演者の精神的負担について
⇒私は原作者としてノータッチの姿勢を貫いてしまった。原作者として丸投げしてしまった責任を強く感じ、反省。

撮影手法について
⇒細かく尋ね安心はしたものの、あらゆる意味で遅すぎたし甘かった。

現在、思うこと

⇒最大限の配慮や共通理解を徹底して作るべきだと映画製作側へ働きかけることを途中で諦めてしまった。主演の奈緒さんの態度に心を打たれた

前半は1年前に書いた文章ですが、すでに鳥飼茜さんは撮影の進め方を問題視されていたということが分かります。

“途中で諦めてしまった”

とあるように、何度か製作陣とやり取りをしても、鳥飼茜さんの意向はあまり反映されなかったということが推測されます。

『セクシー田中さん』の騒動でもありましたが、映像化において原作者の立場があまりに弱いことが、今回の騒動でも浮き彫りになっています。

鳥飼茜さんの代表作である『先生の白い嘘』は、男女の性の格差を描いた注目作で、原作漫画は2013~2017年まで連載されていました。

連載が終わった後に、#MeToo運動が盛り上がったり、性暴力のニュースが増えたり、こういったセンシティブなテーマを扱う漫画としては早かったと思います。

理由④性描写に対する監修が甘かった

公式Xでは、本作を鑑賞した人気ブロガー・はあちゅうさんやフリーアナウンサーの笠井信輔さんなど著名人によるコメントが紹介されています。

試写会に出席した一部の映画ライターや識者たちが“鑑賞コメントの寄稿を断った”とSNSで打ち明けているのです。

試写会が行われたのは三木康一郎監督のインタビューが公開される前ですが、実際に鑑賞して…作品の描き方に違和感を抱いた人も少なくなかったということが明らかになりました。

また、性暴力の問題を題材にしているにもかかわらず、“性描写に対する監修が甘い”と疑問視する意見も見受けられました。

Tomoちん
Tomoちん

映像化するにあたっては慎重さが求められる作品であったにも関わらず、公開前に作品の出来栄えや俳優の演技力以外のことで、このような状況に陥ってしまったのは残念でなりません。

SNSでの反応まとめ

SNSでの反応を調べてみると三木康一郎監督の問題発言に対して批判的なものが多いようです。

映画監督による性被害や性描写に対するハラスメントがひどい

環境や価値観は時代によって少しずつ変化していくものですが、昭和の時代には「ハラスメント」という言葉自体も、認識や意識も薄く、到底、今の感覚では受け入れがたいものです。

『犬死にせしもの』(1986年 監督:井筒和幸)

海賊達の青春を描いた海洋アクション作品。

体当たりで娼婦・千佳を演じる映画初主演の今井美樹さんにも注目が集まりました。

船のヘリに座って用を足すシーンがあるのです。

井筒和幸(いづつかずゆき)監督は今井美樹さんに実際に用を足すよう命じているのです。

しかも、その演技を強要したことを、後に井筒和幸監督は武勇伝のように得意げに語っています…。

その感覚は、令和の時代において全く理解出来ず、信じられません。

『渇き』(2014年 監督:中島哲也)

中島哲也(かなじまてつや)監督は言わずとしれた映画界の巨匠です。

  • 2007年「嫌われ松子の一生」…第30回日本アカデミー賞優秀脚本賞&優秀監督賞、文化庁芸術選奨文部科学大臣賞
  • 2011年「告白」…日本アカデミー賞最優秀作品賞、最優秀監督賞

2014年6月に公開された作品「渇き。」は米国のオースティンファンタスティック映画祭で最優秀脚本賞を受賞し、トロント国際映画祭やBFIロンドン映画祭にも出品され、高い評価を得ています。

しかし、その陰で女優が自殺未遂に追い込まれていたことはあまり知られていません。

オーディションの前に脚本を読んで、レイプシーンがあることは承知していたものの、バストトップの露出があることは知らされておらず、本人の意に反して撮影を強要されたのです。

また、2022年は榊英雄(さかきひでお)監督園子温(そのしおん)監督など有名映画監督からの性被害を告発する女優が相次ぎ、映画界の環境改善に向けて注目が集まり、多くの声が上げられました。

俳優にとって、監督とは絶対の存在なのでしょうか…。

今こそ、映画界、演劇界のこうした旧態依然の思考や慣例にメスを入れていく必要があるのではないでしょうか。

インティマシー・コーディネーターの必要性

映像制作において、俳優がヌードになったり、肌の露出が多いシーン、疑似性行為をするシーン、身体的接触があるシーン、そういった性的なシーンは“インティマシーシーン”と呼ばれます。

そのようなインティマシーシーンの撮影時に、俳優の身体的・精神的安心安全を守りつつ、監督が思い描くビジョンを最大限実現させるためにサポートするのが、インティマシーコーディネーターです。

俳優と監督の間に入り、双方とコミュニケーションを取りながら、より良い作品を創り上げていくためのサポート役なんですね!

ドラマ、映画を製作するにあたり、より良い作品を作りたいという想いは、俳優でも、監督でも、スタッフでも、作品に関わる人すべての共通の思いだと思います。

だからこそ、センシティブな撮影がある際には、インティマシー・コーディネーターが起用されることで、俳優、監督、そしてあらゆる立場のスタッフの心・身体・人権が尊重され守られるのではないでしょうか。

インティマシー・コーディネーターは、今後ますます需要が高まり、注目の職業となりそうです。

まとめ

今回は三木康一郎監督の問題発言について、一体何が問題だったのか、なぜこれほどまでに炎上してしまったのか、わかりやすく解説してみました。

ハラスメントやその二次被害により、心のバランスを崩してしまったり、実際に命を絶ってしまった女優さんもいるので、こうした問題は同じ女性として見逃すわけにはいきません。

本来、映画やドラマはエンターテインメント性があってこそです。

それを演じる俳優が安心して、自由に、豊かに表現できる演劇界の環境作りや体制が早急に望まれますね!

最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。

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