インティマシー・コーディネーターってどんな仕事?資格は必要?年収は?

「インティマシー・コーディネーター」という職業をご存知でしょうか。

「インティマシー・コーディネーター」とはドラマ・映画・舞台など映像制作に置いてヌードや性的な描写シーンを撮影するにあたって、俳優が肉体的、精神的にも安心安全に撮影できるように、かつ監督の意向が最大限発揮できるようにサポート・調整する職業のことを言います。

聞き慣れない職種ですが、近年注目されています。

そこで、今回は「インティマシー・コーディネーター」とは具体的にどんな仕事なのか。

インティマシー・コーディネーターになるのに資格は必要なのか、年収はどのくらいなのか、詳しく調べてみました。

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インティマシー・コーディネーターってどんな仕事?

一体、インティマシー・コーディネーターとはどんな仕事なのでしょうか。

インティマシー・コーディネーターの仕事内容

インティマシー・コーディネーターの仕事内容とは

インティマシーコーディネーターは、インティマシー(親密な)シーンと呼ばれるヌードや性的な描写において、制作側の期待値を十分に理解しつつ、それを的確に俳優に伝え、演じる俳優を身体的、精神的に守りサポートする役割を担う

英語の「インティマシー」は本来の「親密さ」のほかに「個人の性的な領域・行為」という語義があります。

「インティマシーシーン」とは、性別にかかわらず役者がヌードになるシーンをはじめ、身体的接触のあるシーンを意味します。身体の露出、キス、衣服の上から体を触るなどの親密な行為や入浴シーンなども含まれます。

インティマシーコーディネーターは、そういったシーンの撮影において、演じる側と演出する側の意図を事前にヒアリングし、両者が現場で最大限のパフォーマンスを発揮するための環境づくりをサポートする存在です。第三者として撮影現場に立ち会うことで、セクシャルハラスメントや強要によるトラウマなどを防ぐ目的もあります。

インティマシー・コーディネーターは、アメリカやイギリスの映画やドラマの製作現場を中心に導入が広がっていますが、まだ職種が誕生して日が浅いため、どのような仕事が職権に含まれるのか、暗中摸索しているようです。

日本では、2022年度の「ユーキャン新語・流行語大賞」候補にノミネートされたことで、一般的に知られるようになりましたが、まだまだ新しい職種であり聞き慣れない方もいるのではないでしょうか。

インティマシーコーディネーターの始まりは?

この職業は、2017年〜2019年に放送された米HBOのドラマ「DEUCE/ポルノストリート in NY」で初めて採用されました。

2017年、映画プロデューサーのハーヴェイ・ワインスタイン氏が長年にわたって多数の女性を暴行し、さらに被害者が事件を口外しないよう口止め工作を行ってきたことが大きく報道されました。

この事件はアメリカ社会で大きな衝撃を与え、性暴力・セクハラを受けていた女性たちが声を上げる「#MeToo運動」と呼ばれる世界的な社会現象へと繋がりました。

セクシャルハラスメントや性暴力が問題になって#MeToo運動が起き、改めてインティマシー・コーディネーターのポジションの重要性が語られるようになりました。

日本で初めて導入されたのはいつ?

では、日本で初めて導入されたのはいつなのでしょうか。

現在、アメリカのIPA (Intimacy Professionals Association) をはじめいくつかの認定機関がインティマシー・コーディネーターの資格を授与しています。

Netflixの日本版ドラマ『彼女』にて、アメリカでコーディネーター資格を取得したインティマシー・コーディネーターが導入されました。

中村珍の漫画「羣青」を水原希子さんとさとうほなみさんのダブル主演により実写化したNetflix映画『彼女』。

本作では、主にラブシーンや肌の露出のあるシーンの撮影を安全かつスムーズに進めるために「インティマシーコーディネーター」が日本映画で初めて導入されました。

主演の水原希子さんは、海外で役者業をしている友人に役どころについて相談する中で、インティマシー・コーディネーターの存在を知ったそうです。初めてこの職種を知った水原希子さんは、Netflixに採用を提案。

Netflix側より日本人インティマシー・コーディネーターの浅田智穂さんに声がかかったそうです。
白羽の矢が立った浅田智穂さん。すぐには快諾出来ず悩まれたそうですが、キャストやスタッフが安心して働くことができる環境づくりへの取り組みのサポーターとして、最終的に引き受けました。

アメリカでは2017年頃から、日本では2021年、フランスでは2024年に至ってようやく最初のコーディネーターが活動を開始するなど、本格的な導入が始まって日が浅いインティマシー・コーディネーターですが、昨今の多様化の社会において、今後その需要はますます高まりそうな職業だと思います。

日本で活躍しているインティマシー・コーディネーターはたったの2名

日本人インティマシー・コーディネーター(2024年4月時点)

・浅田智穂さん
https://x.com/ChihoAsada
chihoasada.com

・西山ももこさん
https://x.com/intimacy_Jp
intimacycoordinatorkorea.com

アメリカの団体であるIntimacy Professionals Association(IPA)で養成プログラムを修了し、IPA公認の認定を受けて日本で活動しているインティマシー・コーディネーターは、2024年4月時点で浅田智穂さんと西山ももこさんの2人だけです。

インティマシー・コーディネーターの年収は

2021年に、インティマシー・コーディネーターが初めて導入してまだ職業としては歴史が浅く、まだ世間一般的な知名度も低いですが、一体、どのくらいの年収が得られるのでしょうか。

年収について調べてみましたが、現時点でインティマシー・コーディネーターが2人しかいないため、年収がどのくらいか分かりませんでした。

しかし、ハードな仕事内容の割に経済的にはまだまだ厳しいことが垣間見られます。

2人のインティマシー・コーディネーターのうちの1人である西山ももこさんは、2020年にこの仕事を始めてから2024年2月までで関わったのは42作品だそうです。

インティマシー・コーディネーターの苦労はとても多く…

  • 映画、テレビドラマ、舞台、ハリウッド作品など6〜7本を同時進行で進めていく
  • 映画は数カ月かけて撮る中、立ち会うのは1日だけ、1〜2シーンだけ
  • スケジュールはなかなか決まらない
  • スケジュールが重なってしまうこともあり得るため、先に決まったものから入れていく
  • 朝に現場に行って夜は別の作品に立ち会う
  • 朝に現場に行ってそのままロケ・コーディネーターの仕事でアフリカに向かうという日もある
Tomoちん
Tomoちん

目まぐるしいスケジュールですね。
撮影の進行具合に左右されることが多く、体力的にも精神的にもタフさが求められそうです。

仕事をしても費用を請求できるのは作品が完成してからなのでだいぶ先になるし、経済的にインティマシー・コーディネーターの仕事だけで成り立たせるのは現状では無理です。今後、日本で映像作品への予算が増えるとも思えないので、別の仕事と掛け持ちせざるを得ません。

東京新聞

インティマシー・コーディネーターという職業の認知度や需要が高まっていくことで、今後、年収は上がっていくと思われます。

また知名度や認知度については、やはりそれなりに活躍する人数がいなければインティマシーコーディネートが広がっていかないことは確かなので、インティマシー・コーディネーターの卵たちを養成していくことも同時に必要な課題かもしれませんね。

インティマシー・コーディネーターになるのに資格は必要?

資格の取得方法

①アメリカの団体であるIntimacy Professionals Association(IPA)で養成プログラムを受講
株式会社Blanketによるインティマシー・コーディネーター養成講座
 受講料: 一括 880,000 円(税込)

資格があれば出来るというより、資格を取るために勉強したことをきちんと理解してるかどうかが大事であり、それぞれの現場での臨機応変の対応が必要なインティマシー・コーディネーターの役割。

学ぶことも多岐にわたります。

  • ジェンダーやセクシュアリティに関する知識
  • 人権について
  • 同意を得ることの大事さ
Tomoちん
Tomoちん

何がハラスメントで、どういったものがトラウマになるのかなど、誰かを傷つけてしまう可能性があるので、センシティブなこともしっかり学ぶのですね。

浅田智穂さんは、株式会社Blanketを設立。日本語でのトレーニングが受けられるようにIPAの認定カリキュラムを日本で教えるライセンス契約をしました。

言語の壁をなくせば、ぐっと裾野は広がるのではないでしょうか。

また、アメリカと日本では、考え方や文化の違いがありいかに意固地になってルールを守らせるのではなく、日本独自の方法やガイドラインを設けることで、より現場の制作側、俳優側の意図を汲み取りつつ、良い作品に仕上げていくかという配慮も心がけることが大切です。

浅田智穂さんが設けているガイドラインは3つ。

  • インティマシーシーンに関しては、事前に俳優に説明して同意を得たことしかしないこと
  • 性器の露出がないように必ず「前貼り」をつけること
  • 撮影時のクローズドセット(必要最小限のメンバーで撮影すること)

インティマシー・コーディネーターが1人頑張っても空回ってしまい、ルールを守ってもらいながらどうすれば俳優を守れるかを考えて、最低限のルールを考えたそうです。

まだまだ新しい領域の職種であるため、こういったトライ&エラーを繰り返しながら、自分の頭で考えられる人が向いているのかもしれません。

インティマシー・コーディネーターを導入した作品は

2021年、日本で初めてNetflixの日本版ドラマ『彼女』で導入されました。

この作品以降、他にも多くの作品の影にインティマシー・コーディネーターのサポートがありました。

インティマシー・コーディネーターが携わった作品の一部を紹介します。

  • Netflix「パレード」
  • NHK「大奥」
  • 映画「怪物」「658km、陽子の旅」「正欲」「52ヘルツのクジラたち」
  • ドラマ「25時、赤坂で」「恋をするなら二度目が上等」「瓜を破る」
  • ドラマ「東京タワー」主演:King & Princeの永瀬廉さん

激しく求めあう甘美なシーンでは、濃密な演技を適切に指導するインティマシー・コーディネーターの演出を受けた永瀬廉さんと板谷由夏さんのラブシーン。

どんな仕上がりになっているのか気になりますね!

  • 大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」主演:横浜流星さん

喜多川歌麿、葛飾北斎、山東京伝、滝沢馬琴を見出し、東洲斎写楽を世に送り出した蔦屋重三郎を主人公にしたストーリー。

蔦重の故郷は吉原。

気になる遊女のシーンはどう描かれるのでしょう。最近のNHKは攻めていますから気になりますね!

まとめ

今回は「インティマシー・コーディネーター」とは具体的にどんな仕事なのか。インティマシー・コーディネーターになるのに資格は必要なのか、年収はどのくらいなのか、詳しく調べてみました。

まだまだ新進気鋭の職種ではありますが、今後その需要はますます高まっていく予感がします。

制作側と俳優の架け橋として、俳優の尊厳を守りながら、より良い作品を生み出すことが出来れば、視聴者である我々もハッピーであり三方よしですね。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。