先程、幕を閉じたバレーボール男子のパリ五輪予選兼ワールドカップ。最後はアメリカ戦。フルセットまで闘いましたが残念ながら有終の美は飾れず、アメリカに惜敗しました。
しかし10月7日、世界ランク4位の日本が同7位のスロベニアにストレート勝利を収めました!
そして、自力でパリ五輪出場権は獲得しました。
テレビの前で固唾をのんで応援していた視聴者のみなさんも多かったのではないでしょうか。2戦目の格下であるエジプトに敗れ、崖っぷちからの4試合連続ストレート勝ちで掴んだパリ行き切符に、選手はもちろんのこと日本中が歓喜の喜びに満ち溢れました。
エジプト戦後から完全復活した関田誠大選手。
その裏には一体何があったのでしょうか。
今回は、その復活劇の立役者であり、もう1人の日本代表と言っても過言ではない故藤井直伸選手と同ポジションの関田誠大選手との関係性や絆について調べてみました。
藤井直伸選手と関田誠大選手の絆とは
藤井直伸選手と関田誠大選手は日本代表の司令塔セッターとして、同ポジションを争う良きライバル。
好敵手を得て切磋琢磨する仲間であり、尊敬の念、友情、深い絆がありました。
藤井直伸選手と関田誠大選手共に、真ん中のゾーンを積極的に使うセッターでありますが、そのトス配分やプレースタイルは似て非なるものでした。
東京五輪では、関田誠大選手が正セッターで、藤井直伸さんは控え選手でした。藤井直伸選手の奥様であり、自身も元日本代表セッターである佐藤美弥さんは以下のように話しています。
2人は良きライバルでもあり、いい“コンビ”だったのだということが分かります。
「本人はあまり表に出しませんが、もっと試合に出たいとか悔しいっていう思いもありながら、相手の良さを認めつつ、自分に目を向けていました。もっとうまくなりたいとか、もっと結果を出したいって、常に自分自身に向いていたのかなと思います。」
スポーツ報知
「関田君は安定感もあって、ミスがない。正確に攻撃も組み立てるという堅実なイメージで、藤井は自分の好き勝手というか、感性で面白い展開をしていくので、ある意味、2人のバランスも良かったと思います」
スポーツ報知
《藤井直伸選手のプレースタイル》
ミドルを多用するプレイスタイルで、サイドの攻撃が主流だった日本のバレーボールを変えた先駆者である。高校時代は身長が高かったため、自分でアタックをバンバン打つ攻撃的なセッターであった。得意な攻撃は縦のBクイック。
理想とするトス配分について:
ミドルブロッカーとパイプで4割、オポジットが4割、レフトが2割。ミドルとオポで点数を取る
《関田誠大選手のプレースタイル》
サイドのエースへのトスが特徴。真ん中からの攻撃を積極的に使いながら、サイドのエースにも気持ちよく決めさせられることが強みである。
理想とするトス配分について:
クイックが25%、パイプが25%、ライト25%、レフト25%(バランスを重視型)
関田誠大選手の不調を救ったものとは?
関田誠大選手は、同じセッターとして東京五輪に出場し、2023年3月に31歳で急逝した藤井直伸選手の想いも胸に戦いました。
亡き先輩への想いに応えた再出発こそパリ五輪への出場切符の獲得に繋がったと言えるでしょう。
オリンピック出場を決めたスロベニア戦後のインタビューで、涙を堪えながら藤井直伸選手の想いを述べる関田誠大選手。
背番号3のユニフォームを着て「本当にしんどかったですし、藤井さんが、居たかった場所に、ここに自分が立って精いっぱい頑張ろうと思って戦った結果、皆も一生懸命助けてくれたりした。支えあってやっていけた結果が出て、本当によかった」と声を震わせました。
藤井直伸選手も、天国から日本の五輪切符獲得を喜んでいるに違いありません!
関田誠大選手は予選の重圧から精度の高いトスが上がらず、フィンランド戦、エジプト戦ともに先に2セットを先取しながら、3セット目で流れが急転し格下に苦戦する一因になりました。
敗れたエジプト戦では精彩を欠いて交代し、最終セットは始めからコーに立てず。試合後は目を赤らめ、取材も受けられない状態でした。
第2戦目のエジプト戦の大逆転負けで、チームには重苦しい空気が漂いました。
そこから中1日の休養日。
練習会場などでふさぎこんで考え込む関田誠大選手を見て、高橋健選手、小野寺太志選手、高橋健太郎選手、西田有志選手、山内雅大選手らが積極的に話しかけたと言います。「食事の中でもたくさん話をすることで、少しずつ吹っ切れていった。ポジティブになれた」と仲間に支えられて立ち上がれたと明かしています。
なんてチームの雰囲気が良いのでしょうか!
また、2021年の東京五輪でともに戦った偉大な先輩である藤井直伸選手への想いも力になったようです。
試合前日の2日、テレビ番組で藤井直伸選手の特集を目にし、日本代表の司令塔を受け継ぐ立場として、気持ちが奮い立ったそうです。
「ちょっとまた頑張らないとなと思った。藤井さんがいたかった場所だと思う。そこでせっかくやるなら楽しく思いっきりやった方が、藤井さんも見てくれていると思うので、いいのかなと思って、そういう風にポジティブに考えていた」
迷いを振り切り、見事に起動集した関田誠大選手の躍動は日本代表の勝利に貢献しました。
チュニジア戦で関田誠大選手がセレクトした攻撃はまさに藤井直伸選手が得意としたものです。長年に渡って「ミドルが弱点」と言われ続けた日本代表が、これでもかとばかりにミドルを使う。その戦い方こそが藤井直伸選手の象徴であり、今の日本代表につなげた武器だったのです。
まさに“もう1人の日本代表”として藤井直伸選手も一緒に闘ったパリ五輪予選兼ワールドカップでした。
男子バレーパリ五輪予選兼ワールドカップの軌跡
日時 | チーム | スコア | チーム |
---|---|---|---|
9月30日 | 日本 | 3 – 2試合終了 | フィンランド |
10月1日 | 日本 | 2 – 3試合終了 | エジプト |
10月3日 | 日本 | 3 – 0試合終了 | チュニジア |
10月4日 | 日本 | 3 – 0試合終了 | トルコ |
10月6日 | 日本 | 3 – 0試合終了 | セルビア |
10月7日 | 日本 | 3 – 0試合終了 | スロベニア |
10月8日 | 日本 | 2 – 3試合終了 | アメリカ |
第1試合:日本3-2フィンランド
フィンランドとの初戦!日本は石川祐希選手、西田有志選手、髙橋藍選手の活躍で2セットを先取!だがその後テンポを落とし第3、4セットを連取されフルセットにもつれ込む。しかし苦しみながらも開幕戦白星スタートを飾る!
第2試合:日本2-3エジプト
2セットを連取した日本!続く第3セットは流れに乗れずリードを許して惜しくもこのセットを落とす。第4セットも最後は相手に攻められ落としてしまうと、運命の最終セットは一進一退の攻防!しかし最後にミスが出て黒星を喫した。
第3試合:日本3-0チュニジア
ここまで1勝1敗の日本。2セット先取!鬼門の第3セットも3連続得点で先手を取り25-15として今大会初のストレート勝利!
セッターの関田誠大選手は、2戦目のエジプト戦で黒星を喫して、気持ちを切り替えて、崖っぷちに立たされていた日本チームを救う原動力の一人となった。「自分らしさを出していこうと。積極的にクイックを使った。(アタッカー陣は)非常に楽しそうにやっていたし、頼もしかったので本当に良かった」と語っています。
第4試合:日本3-0トルコ
第4戦の相手は世界ランク15位のトルコ。第1セットは中盤に連続得点、相手のミスなどでポイントを重ねて先取!第2セットはトルコが追い上げを見せるが逆転は許さずに連取!続く第3セットは一進一退の攻防ながら最後はトルコのサーブミスで3勝目を挙げた!
第5試合:日本3-0セルビア
今日から勝負の3連戦!相手は世界ランク9位のセルビア。第1セットは # 石川祐希 の3連続得点などで点差を広げ先取すると、第2セットも点差をつけて連取。続く第3セット、一時はリードを奪われたがチーム全員の粘り強さで逆転!ストレート勝ちで通算4勝1敗とした。
第6試合:日本3-0スロベニア
ストレート勝利でパリ五輪出場が決まる運命の試合!身長2メートルの高さと強さを誇るスロベニア相手に粘りの勝利!日本がパリ五輪へ残り1枚の切符を手にしました!
第7試合:日本2-3アメリカ
フルセットの熱戦に持ち込むも、最終戦を勝利で飾れず。
バレーボール男子のパリ五輪予選兼ワールドカップは1位アメリカ、日本は2位という結果で幕を閉じました。
無事に日本代表は来年のパリ五輪出場権を獲得しました!
まとめ
ワールドカップ最終戦は、アメリカに接戦するも敗戦。ワールドカップは5勝2敗で過去最高の2位で大会を終えました。その闘いの中には苦しい場面もたくさんありました。
緊張や重圧のせいで自分らしさが出せず、苦戦していた関田誠大選手。
その苦悩の殻を破ったのは、良きライバルであり、良き先輩であった藤井直伸選手の存在があり、チームメイトの励ましがありました。
次に目指すのはパリ五輪でのメダル獲得です!個々のスキルアップはもちろんのこと、バレーボールはチームプレーであるのでこのままチームの結束力が高くチーム一丸となって次の目標に向かって欲しいものです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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