駅や交番の前に掲示している重要氏名手配書のポスター。
誰もが一度は見たことがあるでしょう。
今年はこのポスターに掲示されていた容疑者が続々と判明・逮捕されています。殺人・強盗・交通違反など重大な犯罪を犯し、被害者やその家族をを傷つけておきながらその場から逃走を続けている容疑者たち。
決して許されるものではありません。
しかし、科学捜査の技術やDNA鑑定技術が日進月歩で進んでいることで、事件当時は解らなかった物理的証拠やDNAが解明されることで重要な犯人(犯行)の手がかりとなり、事件解決に寄与しています。
そこで、今回は重要氏名手配犯がどうやって見つかるのか、進む科学捜査で解決した事件はどんなものがあるのかについて調べてみました。
事件により亡くなられた方のご冥福をお祈りする共に、長年犯人逮捕の日を待つご家族や捜査を続ける警察関係者の方のためにも、いち早い事件解決を望みます。
警察庁指定重要指名手配被疑者とは?
駅や交番などひと目の多い場所でよく見かける重要指名手配書のポスター。
ここには殺人、強盗等の凶悪事件の他、暴行、傷害、窃盗、詐欺等の事件で指名手配された人物たちの犯行当時の写真や似顔絵、事件の懸賞金などの情報が載っています。
「指名手配」とは、逮捕状が出ている被疑者の所在が不明であり、事件捜査を担当する警察署などから全国の警察に、被疑者検挙に必要な事項を手配することです。
指名手配被疑者は、「殺人」「強盗」などの凶悪事件や「暴行」「傷害」「窃盗」「詐欺」「横領」といった事件を起こした後、逃亡を続けており、全国の警察が連携しながら指名手配被疑者の追跡捜査を行っています。
その中でも、特に重大な犯罪の指名手配被疑者を「特別手配被疑者」や「重要指名手配被疑者」に指定するなどして、捜査活動を強化しています。
令和5年9月末現在、全国の警察から指名手配されている者は、凶悪事件等で特に警察庁が指定している重要指名手配被疑者をはじめとして、約540人に上っています。
指名手配犯が捕まらない理由とは
配書と実際の被疑者の容貌がかけ離れている
例えば、逃亡の際に整形手術を受けたり、犯罪を犯してから数十年が経過して老化によって風貌が代わったというように、様々な要因で雰囲気や顔立ちが大きく変わってしまう可能性があります。
このようなケースでは、例え被疑者の家族、親族、友人、同僚が見た場合であっても、指名手配犯と目の前の人物が同一人物であるということを見分けることは難しいのかもしれません。
被疑者がうまく逃げ回っているケースもありますが、人間は目から入る情報に惑わされやすいと言われています。
警察には「見当たり捜査」という捜査手法があり、指名手配犯などの顔写真を記憶し、繁華街やターミナル駅など人混みの中で見つけ出す捜査員がいます。
昭和53年に大阪府警察本部で全国で初めて導入され、これまで4000人以上を検挙した実績があります。
見当たり捜査員は、年を取っても変化しない被疑者の「目」や「耳」の特徴を覚えるようですね。
「見当たり捜査員全員がやっていると思いますが、年をとっても目元は変わらないですね。ルーペで拡大しながら目を覚えるんですね。マスクをしていても目だけが出ているので、大体似ているなと反応できるので。目が似ていると思ったら次に耳ですね。耳の形は年をとっても変わらないんです」
NHK NEWS WEB
見当たり捜査員や被害者遺族など、被疑者逮捕のために何年も心血を注いでいる人でなければ、目の前の人物が指名手配犯であるか否かを見分けるのは難しいのかもしれません。
被疑者がいつ目の前に現れるか分からない…その途方に暮れる天文学的確率にかける見当たり捜査員の地道な捜査には脱帽ですね。
どんなに逃げ回っても、隠れても被疑者にとってもこういった捜査員がどこかに潜んでいると思うと、心理的負荷になるのかもしれません。
指名手配犯が逮捕されるケースは?
それでは、指名手配犯が逮捕されるのはどんな時なのでしょうか。
実は、警察庁は毎年指名手配容疑者の捜査強化月間を設定しており、準備期間の10月を含めた2ヶ月間で合計410人の手配容疑者を逮捕した年もあったようです。
この数字はすごいですね!
・立ち回り先の捜査
・職務質問
・見当たり捜査
・市民からの情報提供
・被疑者本人が出頭
地道な捜査から逮捕につながるケースが多いようです!
最近の重要指名手配犯が判明・逮捕されたケースを紹介
今年に入って続々と事件が解決、もしくは犯人が判明されています。
しかし犯人が既に亡くなっていたケースもあり、被害者や遺族にとってはなんともスッキリしない結末でもあります。では具体的に見ていきましょう。
ケース①三鷹市居酒屋副店長強盗殺人事件
東京都三鷹市上連雀の木造2階建てアパート「美久和荘」一室で平成17年11月24日、住人の永野和男さんが刃物で刺され殺害されました。
警視庁は強盗殺人事件と断定し、三鷹署に捜査本部を設置。周辺の聞き込みからすぐに捜査線上に浮上したのが、上地恵栄者でした。数カ月前から被害者の部屋に転がり込んでいました。部屋には上地恵栄容疑者の血液が付着した下着が見つかった他、身分証などの所持品も残されていたことなどから、発生から1カ月後、指名手配に踏み切りました。
平成18年3月8日、石川県加賀市で首をつっている遺体が発見されました。
死亡したのは平成17末〜平成18年2月下旬頃で身元不明の自殺者とみられていました。
しかし、ここに来て急展開の事態が起きました。
上地恵栄容疑者が、死亡していたことが分かりました。
今回、18年前に見つかった遺体が上地恵栄容疑者と特定されるまでには、2つのステップがありました。
ステップ①
血がついた下着が現場に残っていましたが、当時の技術では、上地容疑者の血だと断定出来ませんでした。その後の鑑定技術の向上で「下着に残っていたあの血は上地容疑者のもので間違いない」と、最近になり断定。
ステップ②
「上地容疑者の血から鑑定したDNA型」と「データベース化されたさまざまな変死体のDNA型」を照合した結果、DNA型が2024年4月25日に一致し、さらに26日になって指紋も一致した。
「山中で見つかった遺体が上地容疑者である」と結論づけられた。
ケース②長野県宮田村殺人未遂事件他
2020年2月28日、長野県宮田村で当時48歳の男性の脇腹を拳銃で撃ったとして、暴力団幹部の金成行は殺人未遂の容疑で指名手配されていました。
匿名で「似た人物を見た」と情報提供があり、2024年2月1日未明、全国に重要指名手配されていた暴力団幹部の金成行(きん・しげゆき)容疑者が、仙台市内で逮捕されました。
ケース③連続企業爆破事件
2024年1月25日には、1970年代に連続企業爆破事件の重要指名手配犯で、「東アジア反日武装戦線」メンバーの桐島聡容疑者が身柄を確保されたのち、末期の胃がんで1月29日に死亡しました。
金成行容疑者が本人であれば、立て続けに重要指名手配犯が発見されたことになります。
奇しくも、金成行容疑者は、警視庁が全国に貼り出している重要指名手配ポスターのなかで、桐島容疑者の隣に顔写真が置かれていました。桐島聡に関して連日報道がおこなわれる中で、金成行容疑者も多くの人の目にさらされ、今回の逮捕に至った可能性があるのではという見方があります。
やはりメディアで報道されることで多くの人に視覚的に印象付けられたことが大きのでしょうね!
まとめ
そこで、今回は重要氏名手配犯がどうやって見つかるのか、進む科学捜査で解決した事件はどんなものがあるのかについて調べてみました。
こういう技術の進歩によって、新たな証拠が何十年後に見つかったり、犯行や犯人を特定する物的証拠が見つかり、事件解決の手がかりになりえます。
ただし、どんなに技術が進歩、正確性が向上しても、扱う人間が正しくなければ、冤罪や真犯人を取り逃してしまう懸念もあります。あくまでも技術を扱うのも「人」であり、捜査をするのも「人」であるので、その正確性や信頼性を担保するような仕組みも必要になってくるのかもしれません。
未解決事件が早く解決することを祈ります。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
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