2024年が明けて早々に衝撃的なニュースが飛び込んできました。
羽田空港で日本航空の旅客機と海上保安庁の航空機が衝突し炎上、死傷者を出しました。
炎上する機体を目の当たりにして、大惨事になってしまうのではとハラハラしましたが、日本航空機の乗客379名は全員脱出することができました。
この絶望的な状況で、機内では一体どんな様子だったのでしょうか。
そして、全員が脱出できた理由は何だったのでしょうか。
JAL機と海保機との衝突事故の原因や乗客全員が脱出できた理由について調べてみました。
今回の事故で亡くなられた方にご冥福をお祈りします。
衝突事故の概要
2024年1月2日(火)、羽田空港C滑走路で、日本航空の旅客機と海上保安庁の航空機が衝突し、炎上する事故が発生しました。
今回の事故により海保の航空機に乗っていた男性乗員5人は亡くなり、男性機長は自力で脱出。
また、JAL機から脱出した乗員乗客379人のうち17人が負傷しましたが、全員機内から脱出しました。
【被害者】
死亡者:5名+ペット2匹
負傷者:18名
衝突事故のタイムライン
2024年1月2日(火)JAL516便
16:20分頃
JAL516便 新千歳空港を離陸
17:47分頃
羽田空港C滑走路に着陸
17:51分頃
JAL機内に煙が充満し始める
17:55分頃
海保機長から羽田航空基地に通報
18:05分
JAL機乗客全員脱出(着陸から18分後)
18:15分
大きな爆発音とともに機体が激しく炎上(脱出から10分後)
20:15分
海保機搭乗5名の死亡確認
2024年1月3日(水)
2:15分頃 鎮火
旅客機は新千歳発羽田行きの日本航空516便(エアバス350型機)。
1月2日午後4時20分頃に出発し、5時47分頃、羽田空港C滑走路に降り立ちました。
タイヤが滑走路に着いた直後、下から突き上げるような揺れと衝撃を受けます。
その直後、翼の脇から火が出て、間もなく煙は機内にも入り込み、充満し始め、煙が漂う中で混乱した乗客からは、「早く出せ」「(出口を)開ければいいじゃないですか」と怒声も上がり機内が騒然とします。
“90秒ルール”の脱出
アナウンスシステムが作動せず、一部の客室乗務員はメガホンを使い誘導し、大きな声で乗客に呼びかけ、励まし、被害の状況を判断して避難できる扉を確認していました。
そして、8カ所ある出口のうち5か所は火災で使えないと判断。
最前列の左右、最後尾の左の計3か所の扉を開けると、滑り台状の脱出シューターで次々と機外に脱出を始めました。
全員が脱出して安全な場所に避難を終えたのは衝突から18分後の午後6時5分。
その10分後に炎は機体全体に回り、翌3日午前2時15分頃にやっと鎮火しました。
「90秒ルール」とは?
非常時に全ての乗客が90秒以内に脱出できるよう備えなければならないと定めたルール。
大勢が命を落とした過去の悲劇的な事故を教訓に現在の形に定められ、航空業界で採用されています。
乗客の脱出が完了し、機長らが最後に滑走路に降り立ったのは、着陸から18分後の午後6時5分。
それから約10分後、機体は大きな爆発音とともに激しい炎に包まれました。
炎が上がった旅客機から乗員乗客379人が生還。
海外メディアからは「奇跡的だ」と驚きと称賛の声が上がりました。
JAL機と衝突した海保機は被災地へ向かう予定だった
JAL機と衝突したのは、羽田航空基地所属の「MA722」(全幅27.43m、全長25.68m)。
ボンバルディア社製の機体。
機長を含め計6人が搭乗しており、乗員5人が死亡、1人が負傷。
石川県能登地方で発生した地震の被災者に向けて救援物資を運ぶ任務中でした。
MA722には、寝袋52個、毛布100枚、ブランケット200枚、非常食850人分、2リットル飲料水156本、簡易トイレ700回分や防じんマスク140個など救援物資が積まれ、新潟空港へ出発しようとしていました。
5名の死因は?
1月5日(金)、警視庁は死亡した5人の海保職員のうち2人について、司法解剖を行った結果、死因は「全身挫滅」だったと明らかにしました。
「全身挫滅」とは?
外部から強い圧力や衝撃が加わり、脳や筋肉、内臓器官など身体全体がつぶれて即死したことを言います。
全身、原型を留めていないほどペシャンコに潰されてしまった状態だったと想定されます。
旅客機が突っ込んできたのですから…その衝撃は想像に絶しますね。
改めて、お亡くなりになられた方々のご冥福をお祈りします。
残る3人の司法解剖を実施し、死亡した5人全員の死因の特定を行い、事故の状況についてさらに詳しく調べる方針でいます。
残り3名の方の死因も同じく「全身挫滅」だったことが判明されました。
JAL機と海保機との衝突事故の原因
日本航空の旅客機と海上保安庁の航空機は、なぜ衝突したのでしょうか。
日が経つに連れて徐々に全貌が明かされていますが、まだ原因については調査中です。
現段階で判明している状況を整理していきます。
1月4日午前、運輸安全委員会は、日航機の乗務員への聞き取り調査を始めました。
【JAL】
男性機長らパイロット3人は社内調査に「海保機を視認できなかった」と説明。
国交省関係者によると、当時管制塔内にいた管制官への聞き取りでは、
【管制官】
担当管制官らは海保機が指示と異なる動きをしていることに気付かなかった。
羽田空港には4本の滑走路があり、運用中の滑走路1本ごとに管制官2人が担当。
うち1人は駐機場から誘導路への移動を担っています。
補佐役の管制官などもおり、管制塔全体で通常15人程度の体制を取っています。
【管制官との交信記録】
5時45分11秒:
海保機に誘導路上の停止位置への走行を指示し、海保機側が復唱
5時47分30秒‐5時49分:
別の民間機2機とのやり取り。
日航機や海保機との交信なし。
負傷した海保機の機長から任意で事情を聞いているようですが、まだ詳細については不明です。
海保機長勘違い?管制指示「停止位置で待機」
1月3日に公開された管制官との通信記録を改めて確認します。
管制官:
「JAL516、滑走路34R(C滑走路)着陸支障なし」
JAL516:
「滑走路34R、着陸支障なし。JAL516」
➡JAL機は管制官の指示を復唱しながら、着陸態勢に入りました。
海上保安庁機:
「タワーJA722A、C誘導路上です」
管制官:
「JA722A、東京タワー(管制)こんばんは。1番目、C5上の滑走路停止位置まで地上走行してください」
海上保安庁機:
「滑走路停止位置C5に向かいます。1番目、ありがとう」
➡管制官は滑走路には入らず、停止位置で待つように指示。
管制官は滑走路には入らず、停止位置で待つように指示。
海保機もそのように復唱していますが、実際には滑走路に進入していました。
航空評論家の杉江弘氏は「管制官とのやり取りにおかしな点はない」としたうえで、海保機側が「1番目」という言葉を勘違いした可能性を指摘します。
元JAL機長・航空評論家 杉江弘氏 「地上走行の許可を出した時に『あなたは1番目です』と最後に付け加えている。この1番目は、管制側から『(まわりに)他の飛行機があまりいないので、C5に行くなら一番真っ先に行ける』という単なるアドバイスや、サービス的な言葉。考えられる一つの推測としては『1番目と言われたので、とりあえず滑走路まで行ける』と勘違いした、思い込んだ可能性はある」
杉江氏は「滑走路に進入できる1番目という指示を、滑走路で離陸を待つ1番目と勘違いしたのではないか」というのです。
テレ朝News
専門家は交信記録のやり取りから、海保の機長が滑走路に進入できる1番目を、滑走路で離陸を待つ1番目と勘違いした可能性を指摘しました。
管制官と海保の交信にて、滑走路の停止位置での待機を、離陸を待つ1番目と勘違いして滑走路に進入。
管制官は海保機が異常な動きをしていることに気が付がない。
着陸態勢に入ったJAL機は滑走路に海保機を視認出来ず。
原因(※個人的推測)
ミスコミュニケーションが幾重にも重なったヒューマンエラー?
JAL機と海保機との衝突事故。379名生還の鍵は
全員脱出することができたJAL機の乗客乗員379名。
その理由は一体何だったのでしょうか。
最新鋭の機種だった
飛行機がエアバス社の最新鋭機でエアバス350型機。
強度が高く、燃えにくい素材が使われていたため、外から火がまわって、客室まで到達する時間が非常に長かったことで時間的な余裕ができた。
客室乗務員の冷静な対応
炎と煙が迫る中、パニックを起こさせずに乗客を誘導した客室乗務員の動きは大きな理由でしょう。
客室乗務員の役割はサービス要因と保安要員であり、非常時には保安要員として乗客の安全に身を挺します。
JALでは1か月〜1か月半行われる新人研修のうち、10日間ほどは救難訓練に充てられます。
また、どんなにベテランの客室乗務員でも全乗務員を対象に年に1回、緊急時の脱出訓練を行っています。
丸1日かけ、非常用ドアの操作などを確認し、実技と筆記の試験があり、合格点に満たない場合は翌日から乗務禁止になるといいます。
今回の事故では、訓練で身に着けたスキルが、緊迫した実際の場面でも生かされました。
客室乗務員の指示通りに従った乗客
各乗務員が炎の状況を見極め、適切な非常口を選んで乗客を誘導したことで、乗客もパニックに陥らず、指示通り動いたことが全員が脱出できた要因の1つでしょう。
そして、乗客乗員の脱出を支えた一因とみられるのが「90秒ルール」と呼ばれる原則です。
国際的な航空機の設計基準は、脱出シューターが開いてから、90秒以内に搭乗者全員が脱出できるように定めています。
貴重品や思い出の品など、荷物も一緒に持ち出したい気持ちはとてもよく分かります。
しかし、非常時の場面で荷物を取り出す、荷物を持ち出すことで失う何秒かのロスで尊い人命が失われる危険が高くなります。
“人命最優先の考え”の下、非常時に荷物は持って逃げないということが大前提なんですね!
また、煙や炎が迫る中で「早く外へ逃げ出したい」という気持ちもとてもよく理解できます。動画の中でもそういった場面がありましたね。
しかし、むやみに出口を開ければ、機内に炎が入り込む恐れもあり、自己判断は危険です。
やはり、訓練を踏まえた乗員の冷静な判断と、それに従ってパニックを起こさなかった乗客の行動が、安全確保につながったのではないかと思います。
JAL機と海保機との衝突事故の補償
JALは、事故機に搭乗していた乗客への見舞金などについて、「1人1人に対応しており、個別の金額については回答を控えたい」としています。
乗客からの情報によると、見舞金として乗客1人当たり10万円、預け荷物の弁済金として10万円を支払うと伝えられたそうです。
ペットは“手荷物”扱い
JALでは貨物室で預かっていたペット2匹が、救出できなかったことを明らかにしています。
客室と同じ温度・湿度となるよう空調管理された貨物室で運んでいましたが、残念ながら亡くなってしまいました。
飼い主にとっては、とてもショックですね。
国内航空会社の大多数は、乗客とペットが客室へともに入ることができないルールとなっており、航行中のペットは貨物スペースで過ごすことが一般的です。
その一方で海外の航空便では、ペットともに客室に乗り込むことは珍しいことではありません。
しかし、非常時の際、客室にペットを連れていける航空会社に乗っていたとしても、ペットとともに脱出することは非常に難しいと言わざるを得ないようです。
旅客機から乗客が緊急脱出する際の鉄則が「手荷物を一切持たずに脱出する」ということです。
もちろんペットは“家族の一員”としてともに長い時間を過ごした大切な存在であり、感情的には耐えられないことも、理解できます。
しかし、ペットは「手荷物扱い」に当たり、盲導犬などの特殊な事例を除いては、「万が一の緊急脱出の際には機内に置いたまま脱出しなければならない」原則が、どの航空会社にも当てはまってしまうというのが現状です。
まとめ
JAL機と海保機との衝突事故の原因や全員脱出の理由について調べてみました。
まだ残る3名の死因や事故原因も特定されていませんので、引き続き続報を待ちたいと思います。
緊急時の避難誘導は過去の事故の教訓も踏まえて見直しが重ねられてきました。
今回の事故でも避難の詳しい状況や改善点を航空業界全体で検証されることと思いますが、もう二度とこのような痛ましい事故が起きないように事故防止に努めて欲しいものです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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