2023年11月14日、宝塚歌劇団は宙組に所属していたは25歳の劇団員が9月末に自宅マンションから転落死した問題について会見を開き、外部の弁護士らによる調査結果を公表しました。
宝塚歌劇団理事長の木場健之氏や劇団幹部ら3人が出席。
約100人の報道陣を前に遺族への謝罪と「安全配慮ができなかった」と述べる一方で、故人への「いじめやハラスメントは確認できなかった」と報告しました。
この会見をを受けて遺族側も会見を開いています。
両者の見解は分かれ、まだまだ深い隔たりが見えます。
そこで、今回は調査結果の要点をまとめながら、遺族側の弁護を担当する川人博弁護士がどんな人物なのか調べてみました。
【宝塚歌劇団】外部弁護士による調査結果まとめ
9月30日、宝塚市内の自宅マンション敷地内で死亡しているのが見つかり、警察は自殺の可能性が高いとみています。団員の急死を受けて、10月に外部の弁護士による調査チームを設置しました。
そして、11月14日にその調査報告書が公表されました。
調査チームは、宙組の全団員66人のうち、4人は弁護士チームによるヒアリングを拒否したそうです。
拒否の理由は「ご容赦ください」と返答しませんでしたが、一体、この4人が誰なのか気になるところです。
全員のヒアリングが出来なかったのに、調査結果を報告したことになります。
公平性、信憑性は信じるに足りるのでしょうか。
ヒアリングを拒否した4人とは誰?
有愛きいさんの死が明らかになって以降、「週刊文春」には、複数の現役劇団員からの告発が相次いでいるそうです。
調査チームのヒアリングを拒否した4人とは一体誰なのでしょうか。
- 天彩峰里さん
- 芹香斗亜さん
- 松風輝さん
- 花菱りずさん
- 優希しおんさん
「週刊文春」にリークされた情報によると名前を挙げられたのは、6月に新たにトップスターに就任したばかりの芹香斗亜さんや、最年長として組長を担うなど、宙組内で人気が高い“幹部”ばかりです。
そういった人たちが、有愛きいさんへのいじめに“加担”していたという内部情報が寄せられたといいます。
天彩峰里さんは、2023年12月25日付での月組への組替えが発表されました。いじめ疑惑報道から約半年での組替えとなれば、どうしても影響があったと思わずにはいられません。
優希しおんさんは2023年12月24日付けで退団を発表しています。
宙組組長の松風輝さんは、近いうちでの退団が検討されていると言われています。
歌劇団という閉鎖的で特殊な世界で、実際のところは何があったのかは定かではありません。
しかし、“いじめ加害者”と疑惑を持たれたタカラジェンヌが、まるで“粛清”されるように、移籍や退団となる道筋が引かれているように思えてなりません。
過重労働があったこと認める
宝塚歌劇団理事長の木場健之氏は以下のように述べています。
「劇団としては、特に稽古終盤の過密なスケジュールをこなしながら、新人公演の稽古も予定される中で、長の期(下級生の指導)としての役割に娘役2人のみであたったことが故人に大きな負担になったと判断しています。そのような状況や問題を劇団側が十分に把握できていなかったことについて責任を痛感しています」
新たに理事長に就任する村上浩爾専務理事は以下のように述べています。
「劇団の中で起きた以上、健康面の配慮をすべきだった。深く反省している」と述べました。
報告書によると、有愛きいさんは新人公演のまとめ役で、稽古や準備などで長時間活動。
その状況で上級生から度重なる指導を受け、強い心理的負荷がかかった可能性が高いと見られています。
歌劇団は、長時間労働で女性に強い心理的負荷がかかっていたのに適切なサポートができず、安全配慮義務を十分に果たしていなかったと認めました。
併せて、遺族に対し謝罪と補償を行う考えも示しました。
現時点で、歌劇団はまだ、遺族とは面会していないと言います。
調査結果を待っていたのか、もしくは遺族の意向があるのかもしれませんが、11月に入ってもまだ面会が出来ていないのは、正直驚きです。
ハラスメントの事実はない
一方で、木場健之理事長は上級生によるハラスメントについては「あくまで指導の一環でハラスメントの事実はなかった」と話しました。
「故人に対するいじめやハラスメントは確認できなかったとされており、例えば『うそつき野郎』『やる気がない』といった発言の有無についてはすべて伝聞情報であり、実際にそのような発言があったことは確認されておりません。ただ、『うそをついていないかと何度も聞いていた』という状況は確認できており、過密なスケジュールにより追い詰められていった状況の中で、上級生から下級生への指導が公演を安全に努める上で必要だったとはいえ、それらが時間的に近接・重複して起きたことで故人にとって大きな心理的に負担になったことが十分に考えられます」
「いじめ」「ハラスメント」はあくまでも「指導」ということになっています。
2023年2月には、有愛きいさんが上級生から額にヘアアイロンを押し当てられたと週刊文春が報道しました。
遺族側は有愛きいさんが上級生からパワハラを受けていたと主張しています。
報告書は上級生らの指導について「社会通念上、許容される範囲」と認定し、いじめやパワハラは確認できないと結論付けたのです。
今後の宙組について
上級生による「いじめやパワハラ」は確認できなかったと説明した歌劇団。
今回の問題で退団を希望している宙組生もいるとの報道には「少なくとも退団希望はまったく聞いていない」と答え「宙組に問題があったとは考えていない」と言う見解も述べました。
遺族の代理人弁護士は「宝塚歌劇団に入ったこと、何より、宙組に配属された事がこの結果を招いた」とコメントしています。
両者の言い分がかけ離れています。
宙組は有愛きいさんが亡くなった翌日の10月1日から11月5日までの「PAGAD(パガド)」「Sky Fantasy!」の公演を中止しましたが、今月25日に開幕を予定していた東京宝塚劇場公演について、木場健之理事長は「出演者の心身、安全を確認した上で実施してまいりたいと考えております」と話しました。
この混乱の中、公演を再開させるのはいかがでしょう…。時期尚早ではないでしょうか。
目下、休演が続く宙組内部では、複数のタカラジェンヌが退団を視野に、事態の動向を見守っていると言います。
その数は「宙組全体の半数近い20~30人規模」と大量退団まで囁かれています!
今後の宙組公演は実施可能かを見極めてゆくとし、芹香斗亜さんをトップとした体制に変更はないと述べています。
もし大量退団となれば、公演は維持できません。5つある組のタカラジェンヌたちを大幅に入れ替え、異動させるといったことも言われていますが、各組にはそれぞれの特性やカラーがあります。大幅な異動によって組のイメージ、特性、人気、バランスなどが不協和音となるか、協和するかは一か八かによるところがあります。しいては、歌劇団そのものが崩壊してしまう可能性も否定できません。
今後の宝塚歌劇団について
《役員の厳罰》
・木場健之理事長は12月1日付で辞任。
・歌劇団の理事と阪急電鉄社長ら3人は報酬の一部を返上。
また、年間興行数を減らして過密な公演スケジュールを見直すなどの対応策を行うと発表しました。
宝塚大劇場と東京宝塚劇場の興行を年9回から8回に減らすなど、団員の負担軽減を図るとのことです。
来年は宝塚歌劇団設立110年の節目を迎えるメモリアルイヤーです。
この節目の年を、マイナスイメージを残さないまま迎えることに躍起になっているようにしか見えません。
【遺族側】主張のまとめ
死亡した有愛きいさんの遺族は「過重労働と上級生からのパワハラが原因で自死した」として歌劇団などに謝罪と適切な補償を求めています。
遺族側が作成した労働時間集計表によりますと、女性は亡くなる直前まで休みなく朝から深夜まで働いていたことがわかります。
時間外労働は277時間35分で、過労死ラインとされる「単月100時間」を遥かに上回っていました。
さらに、有愛きいさんは上級生からヘアアイロンを額に当てられてやけどを負ったり、「うそつき野郎」「下級生の失敗はすべてあんたのせい」などと暴言を受けていたりしたといいます。
アイロンでやけどを負ったと主張している点について、調査委員会に「やけどされた」「ちゃいろになっている」などとの女性のLINEメッセージを遺族が提出していたにもかかわらず、その内容が調査報告書に含まれていない点も問題であると指摘しました。
宝塚歌劇団側は「ハラスメント」や「いじめ」の事実は確認できなかったと明かしています。
これに対して遺族は納得できず、遺族側の代理人は会見を開き「パワハラの事実認定と評価は失当」、「報告書は再検証すべき」などとの見解を示しました。
調査報告書の内容を前提とせず再度検討すべきと主張しています。
併せて、遺族側は歌劇団側に調査報告書に対する意見書を提出する方針で、劇団側との面談交渉を11月末までに行う予定だということです。
遺族側の川人博弁護士はどんな人物?
過労死訴訟で著名な弁護士である!
略歴 1949年大阪府泉佐野市生まれ。
東京大学経済学部卒業。
1978年東京弁護士会に弁護士登録。
1995年川人法律事務所創立。
1988年から「過労死110番」の活動に参加し、現在、過労死弁護団全国連絡会議幹事長。
専門分野は過労死・過労自殺・労災・職業病。
過労死の事件に取り組むようになったのは、1988年に「過労死110番」の活動に参加したのがきっかけです。電話での悲痛な訴えとは裏腹に、行政の壁は厚く、労災認定が認められるのは極めて稀という現実に直面したそうです。
遺族が実情を訴える場はできたけれど、救済はされない。
そこで川人博弁護士は、労災認定に頼るだけでなく、直接企業を相手に裁判を起こすべきだと考え過労死を専門とする弁護活動に注力を入れます。
2015年暮れ、電通の新入社員だった高橋まつりさんが、1ヶ月100時間を超える残業を課せられた末に自殺した事件は、社会に大きな衝撃を与え、「働き方改革」推進のきっかけともなりました。
高橋まつりさんの自殺の労災申請につき遺族代理人となり、労災認定を勝ち取ったのが、川人博弁護士です。
まとめ
やっと調査結果が公開されましたが、遺族にとっては到底納得できるものではなく両者の間には大きな溝があります。今後も交渉、面談は続いていくものと見られています。
来年は宝塚歌劇団が110年の節目を迎えます。
宝塚歌劇団が膿を出し切り、生まれ変われるのか…まだまだ注視していきたいと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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